アデノイド / Adenoid(あでのいど)
小児の鼻咽腔にある、咽頭扁桃として知られる組織が肥大したもの。
扁桃は鼻咽腔にあり、外部から侵入した異物・細菌・ウイルスなどに対して抗体を産出し、免疫をつかさどる役割をもちます。
アデノイドは、免疫反応が活発になり、扁桃が肥大した状態です。
通常小児では肥大していることが多く、5-6歳でもっとも大きくなります。アデノイドの過度の肥大のために呼吸障害などを呈している場合には、治療の対象となります。
いびき / snoring(いびき)
睡眠中に鼻や喉などが狭まるため、呼吸に伴って出る音。
イビキは「よく眠っている証拠」などと誤解されている場合がありますが、実はよく眠れない原因のひとつです。イビキは、睡眠中に鼻や喉など息を通すところ(気道といいます)が狭くなり、ここを無理矢理息を通すために気流が乱れ、鼻や喉が振動して出る音です。イビキがあるということは、睡眠中に呼吸をするために余計な労力が必要ということですから、多かれ少なかれ睡眠には悪影響があります。上気道抵抗症候群といって、睡眠時無呼吸症候群のように呼吸が止まらないにもかかわらず重度のイビキがあり、深い睡眠がまったくとれなくなる病気もあります。
また習慣的にイビキをかく子供は、集中力に欠け学校の成績が低いという研究報告もあります。
過覚醒 / 覚醒亢進(かかくせい / かくせいこうしん)
覚醒水準が亢進すること。強いストレスなどを受けたときにみられる。
強いストレスを受けたとき、交感神経の活動が亢進したり、副腎皮質ホルモンが分泌されたりして、体は活動するのに適した状態になります。これは生体防御のための正常な反応であり、ストレスが解除されると、体もリラックスした状態にもどります。
しかし何らかの原因で、ストレスが解除されても体が緊張した状態を保ち続け、「不眠症」「イライラ」「ちょっとしたことに極端に反応する」「警戒心が強くなる」などといった状態が続いてしまうことがあります。これを過覚醒といいます。
心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の特徴のひとつに過覚醒があげられます。
過眠(かみん)
/ hyersomnia /
夜間十分な睡眠をとっているはずなのに、日中に目覚めていられないような病的な眠気がみられること。
夜間に十分睡眠をとっているはずなのに、日中に強い眠気が出現し、居眠りしてしまうなど、日中に目覚めていられなくなる場合は病的な眠気があると考えられ、このような状態を過眠といいます。長期間にわたって睡眠不足が貯まっている場合にも、このような状態がみられますが、十分な睡眠を確保すると自然に眠気がとれます。
健康な人でも、午後の早い時間帯には体内時計の働きにより眠気が出てきますが、意志の力によって目覚めていることができます。
しかし、いくらがんばっても目覚めていられない場合は、病的な眠気と考えられます。このような病的な眠気があると、学業や仕事の能率が落ちるだけでなく、「いい加減な人」と社会的な評価が悪くなったり、居眠り運転事故を起こしたり、転落、転倒などの事故に巻き込まれやすくなります。また、職業運転手や、大型機械オペレーター、組織のトップなどでは操作ミス、判断ミスにより大事故や大損失の原因となります。
過眠があることによって、学業不振や、就業困難などの影響があるだけでなく、生活習慣病を悪化させるため、すぐに治療が必要な睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れていることがあるので、専門機関での検査・治療が必要です。
概日リズム睡眠障害(がいじつりずむすいみんしょうがい)
/ circadian rhythm sleep disorder /
体内時計の周期を外界の24時間周期に適切に同調させることができないために生じる睡眠の障害。
睡眠・覚醒リズムは、体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系などと同様に、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、このような約1日の周期をもつリズムのことを概日リズムと呼んでいます。
ヒトの体内時計の周期は約25時間であることがわかっていますが、地球の1日の周期は24時間であり、体内時計とは約1時間のずれがあります。日常生活において、さまざまな刺激(同調因子)を受けることにより、体内時計が外界の周期に同調して約1時間のずれが修正されています。もっとも強力な同調因子は光であり、食事や運動、仕事や学校などの社会的な因子も同調因子として働いていると考えられています。
この体内時計の周期と地球の24時間の周期との間のずれを修正することができない状態が続くと、望ましい時刻に入眠し、覚醒することができなくなってきます。また、無理に外界の時刻に合わせて覚醒しても、眠気や頭痛・倦怠感・食欲不振などの身体的な不調が現れてきます。このように体内時計の周期を外界の24時間周期に適切に同調させることができないために生じる睡眠の障害を概日リズム睡眠障害といいます。
概日リズム睡眠障害は、人為的・社会的な理由により体内時計を短期間にずらさなければならない場合に起こる時差症候群(時差ぼけ)、および交代勤務睡眠障害、体内時計が外界の周期に同調する機能に問題がある場合に起こる内因性概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、非24時間睡眠覚醒症候群、および不規則型睡眠覚醒パターン)に分類されます。
交代勤務睡眠障害(こうたいきんむすいみんしょうがい)
/ shift work sleep disorder /
交代勤務のために睡眠時間帯が頻繁に変化することにより、睡眠をはじめ精神・身体機能の障害がもたらされる症状。
交代勤務のために睡眠時間帯が頻繁に変化させられることによって、睡眠障害をはじめとする種々の精神・身体機能の障害がもたらされることがあり、交代勤務睡眠障害と呼んでいます。
典型的なものでは、夜間の勤務を終えて朝方から睡眠をとる際になかなか寝付けず、寝付いても何回も途中で目が覚めてしまうという症状が認められます。起床後に疲労回復感が乏しく、夜間の勤務時間帯における眠気と注意集中困難および作業能力の低下がみられます。
深部体温リズムやメラトニン・コルチゾールなどのホルモンリズムは夜間勤務に伴う睡眠スケジュールに完全に同調しにくいため、上記の症状は、交代勤務に伴う睡眠・覚醒スケジュールと、他の生体リズムとの間のずれによると考えられています。
治療としては、まとまった期間夜勤が続く場合には、個々の生体リズム間のずれを改善し、夜間勤務時の覚醒レベルを高めるために夜間の高照度光照射を行うことがあります。また夜間勤務中に仮眠をとると作業能率の低下が少ないとも言われています。さらにカーテンなどで日中の遮光に十分注意すれば、日中の睡眠内容を改善させることも可能です。三交代勤務の場合には、日勤、準夜勤、深夜勤の順にシフトを組むと、生体リズムを同調させやすいことがわかっています。
周期性四肢運動障害(しゅうきせいししうんどうしょうがい)
睡眠中に四肢の異常運動が生じて睡眠が妨げられる病気。
睡眠中に片足あるいは両足の不随意運動(ピクピク)が周期的に起こるため、頻回に脳波上の覚醒反応を生じ、夜間の不眠や日中の過眠が生じる病気です。
ご本人は自覚していないことが多く、診断には終夜ポリソムノグラフ(polysomnography: PSG)検査を行う必要があります。むずむず脚症候群と合併することが多く、年齢とともに増加します。
時差症候群(じさしょうこうぐん)
/ jet lag / 時差ぼけ /
4~5時間以上時差のある地域へ高速移動することにより、体内時計と外界の明暗周期がずれてしまうために起こる。
時差症候群(時差ぼけ)は、4~5時間以上時差のある地域へジェット機で高速移動した時に、出発地の時刻(明暗周期)に同調していた体内時計が到着地の時刻(明暗周期)と大きくずれてしまうために起こります。
このため、到着地時刻にあわせて生活しようとすると夜になっても寝付くことができず、寝付いても何回も目が覚めてしまうようになります。昼間は過度の眠気、作業能力の低下、消化器症状など、様々な心身の不調が生じます。
ヒトの体内時計の周期は約25時間であり、生体リズムを遅らせるほうが同調させやすいため、遅寝遅起きとなる西向き飛行では症状は軽く、早寝早起きとなる東向き飛行では症状が強く出現します。対策としては睡眠薬を使用することで夜間の睡眠を確保すること、および仮眠をとって睡眠時間を補いながら、光を浴びることや社会的接触を積極的に行うことにより、到着地の明暗周期に同調するよう勤めることです。
睡眠障害(すいみんしょうがい)
/ sleep disorder /
睡眠に関連した多種多様な病気の総称。大きく分類すると、不眠症・過眠症・睡眠時随伴症がある。
睡眠に関連した多様な病気を、まとめて睡眠障害と呼びます。
睡眠障害のなかで最も多いのが、不眠症です。不眠症とは、その人の健康を維持するために必要な睡眠時間が、量的あるいは質的に低下し、そのために社会生活に支障をきたしたり、自覚的にも悩んでいる状態をいいます。
過眠症とは、日中に過剰な眠気がおきる状態をさします。仕事や学習など日常生活に支障をきたすような場合には、病的と考えられます。
睡眠時随伴症は、睡眠中におきるねぼけ行動をさします。
睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)
/ parasomonia /
睡眠中におきるねぼけ行動の総称。
睡眠中に生じるねぼけ、夜尿、歯ぎしり、悪夢など望ましくない現象を総称して睡眠時随伴症と呼んでいます。
主として運動面の問題として現れるものとして睡眠時遊行症、夜驚症、レム睡眠行動障害、寝言などいわゆるねぼけに含まれるものがあります。
また、自律神経の問題が主なものとしては、睡眠時遺尿症(夜尿症)、乳児睡眠時無呼吸症などがあります。その他のものとしては、悪夢、睡眠麻痺などがあります。
睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)
/ sleep apnea syndrome /
眠り出すと呼吸が止まってしまうため、過眠や高血圧などを引き起こす病気。
睡眠時無呼吸症候群は眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。
これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。さらに睡眠不足によるストレスにより、血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームがひきおこされます。
1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病・眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、すぐに治療が必要です。
ひどいイビキ、睡眠中の呼吸停止がある場合には速やかに専門の医療機関で検査・治療を受けることが大切です。
睡眠相後退(前進)症候群(すいみんそうこうたい(ぜんしん)しょうこうぐん)
/ delayed(advanced) sleep phase syndrome /
睡眠相後退症候群は入眠困難と覚醒困難が慢性的に持続し、睡眠相前進症候群は夕方の眠気や早朝覚醒を呈する。
睡眠相後退症候群は、社会的に望ましい時刻に入眠および覚醒することが慢性的に困難であり、多くの場合午前3時~6時のある一定の時刻になってやっと寝付くことができます。
学校の試験などの大事なスケジュールがある時でも決められた時刻に起床することができず、なんとか無理をして起床したとしても、午前中は眠気や頭痛・頭重感・食欲不振・易疲労感などの身体的不調のために勉学や仕事を行うことが困難な状態になります。
大学生の中には、夜型の生活を続けているうちに、同様の睡眠・覚醒パターンになっている場合が見られますが、この場合は試験や遊びなどで、どうしても朝起床しなければならない時には起きることができるという点が異なっています。
睡眠相後退症候群の場合には、本人にとって非常に重要なスケジュールがある時でも起床することができず、その結果社会的不利益を受けることになります。発症年齢については、思春期から青年期が好発年齢であると考えられています。治療としては、朝の高照度光療法または夜のメラトニン投与などで生体リズムの位相を前進させる方法が有効です。
睡眠相前進症候群は、夕方の眠気や早朝覚醒を呈するもので、高齢者に多いものです。加齢に伴う生体リズムの周期の短縮が関与していると考えられています。治療としては、入眠前の高照度光療法が有効とされています。これは夕方の光の体内時計に対する作用により、生体リズムの位相が後退することを目的とした治療法です。
睡眠不足症候群(すいみんふそくしょうこうぐん)
/ insufficient sleep syndrome /
慢性の睡眠不足のため、日中に過眠が出現する状態。
日中の眠気により目覚めていられないと訴える患者さんの中には、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因ではなく、日常生活で慢性の睡眠不足となっているために過眠が出現していることがあります。
睡眠不足症候群の人の普段の生活を調べてみると、平日は3~4時間しか眠らない生活をしています。この分、週末は10~12時間も眠っている人がほとんどです。
このような生活を続けていれば睡眠不足になって当たり前なのですが、不思議なことに、睡眠不足であることをご本人が自覚していないことがほとんどです。真面目で融通の利かない人が多く、仕事が一段落するまでは遅くまで一人で仕事をしたり、帰宅後も家事が一通り済まないと床に入らないため、睡眠時間が犠牲になっているようです。
ナルコレプシー(なるこれぷしー)
/ narcolepsy /
ヒポクレチン(オレキシン)を作り出す神経細胞が働かなくなるためにおこる過眠症。
ナルコレプシーは古くから知られていた過眠症のひとつで、日中に突然強い眠気が出現して、眠り込んでしまう病気です。
ナルコレプシーの眠気は強烈で睡眠発作と呼ばれます。入学試験中や初めてのデート中、顧客との商談中に眠り込んでしまうほどです。また、眠気が襲ってきたことに気づく前に眠り込んでしまうため、居眠りをしたことに本人が気づかないこともあります。
ナルコレプシーに特徴的な症状として、びっくりしたり大笑いしたときに全身や身体の一部の力が抜けてしまうカタプレキシー(情動脱力発作)、寝入りばなに出現する幻覚様の体験(入眠時幻覚)、寝入りばなに出現する金縛り(睡眠麻痺)があります。
近年、ナルコレプシーの原因が、脳の中のヒポクレチン(オレキシン)を作り出す神経細胞(ヒポクレチン・ニューロンあるいはオレキシン・ニューロンといいます)が働かなくなることによって起こることがわかりました。
この神経細胞が働かなくなる遺伝子異常が犬のナルコレプシーの血統で見つかったこと、同様の遺伝子異常が組み込まれたネズミでナルコレプシーの症状が出現すること、ナルコレプシー患者さんでは脳脊髄液中のヒポクレチン(オレキシン)がほとんど消失していることから、確認されたものです。
認知症(にんちしょう)
/ dementia /
記憶障害など脳の認知機能障害により、日常生活に支障をきたすようになる疾患。アルコール多飲により認知症になりやすくなる。
認知症は、記憶障害、見当識障害、判断力の低下(中核症状)を引き起こす脳の認知機能障害を指す。この障害が日常生活に支障をきたすようになると認知症と呼ばれる。認知症とは症候に対する名称であり、種々の原疾患がある。
最も多く代表的な疾患はアルツハイマー病である。その他の原疾患としては脳梗塞に引き続いておこる脳血管性認知症、幻視を伴うレビー小体病、前側頭型認知症などがある。
アルコール多飲も認知症の代表的な原疾患である。特に大量飲酒者において、ビタミンB1欠乏が合併することでウェルニッケ・コルサコフ症候群(Wernicke-Korsakoff Syndrome)が発症する。この際には脳内で急速に神経細胞障害が生じており、急性期にはけいれんや意識障害から死に至ることがある。慢性期には認知症をきたす。
非24時間睡眠覚醒症候群(ひにじゅうよじかんすいみんかくせいしょうこうぐん)
/ non-24-hour sleep-wake syndrome /
一定の時刻に入眠し起床することが著しく困難であり、睡眠の時間帯が毎日30~60分ずつ遅れていく症状。
非24時間睡眠覚醒症候群は、通常の外部環境のもとで、約25時間の睡眠・覚醒周期を示す障害です。一定の時刻に入眠し起床することが著しく困難であり、寝付く時刻が毎日30~60分ずつ遅れていきます。
そのため、夜間に眠れている時期と昼と夜とが逆転して昼間に眠ってしまう時期とが交互に出現します。このため、夜間の不眠と日中の過度の眠気、全身倦怠感により社会生活に支障をきたす時期が周期的に出現するのが特徴です。
高度の視覚障害者で比較的多く報告されており、光による体内時計の同調が行われないことが原因であると考えられています。視覚障害のない症例も報告されており、病因については未だ解明されていませんが、夜の早い時間帯に光の影響を受けやすいため睡眠時間帯の後退が起こりやすいという説、あるいは体内時計の周期が長いために、昼夜の明暗周期への同調が困難となるという説などが考えられています。寝付く時刻と覚醒する時刻が一定しないため、通常の社会生活が困難となります。
本症候群発症後にうつ状態を呈する場合もあります。性差については男性の方が多く、発症年齢については思春期から青年期が好発年齢であると考えられています。治療としては、朝の高照度光療法、または夜のメラトニン投与などで生体リズムの位相を前進させる方法が有効ですが、毎日覚醒する時刻が遅れていくため、朝の高照度光療法は困難なことが多く、メラトニン投与が第一選択の治療法となります。
不眠症(ふみんしょう)
/ insomnia /
寝つきが悪い・何度も目がさめる・眠りが浅いといった症状が慢性化している状態。
不眠症とは眠りたいという意思があるにもかかわらず、睡眠時間が短く、眠りが浅くなり身体や精神に不調を来す神経症で、睡眠障害の一つです。
症状としては下記の4つに分けられます。
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入眠障害:寝付きが悪い
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中途覚醒:眠りが浅く途中で何度も起きてしまう
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早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまいそれ以降眠れなくなる
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熟眠障害:ある程度の時間寝ているのにも関わらずぐっすり寝たという感じが得られない
不眠の原因はかゆみ・痛み・発熱など身体的な原因によるもの、不規則な生活によるもの、ストレスや精神疾患による覚醒亢進、クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。
治療は睡眠導入剤や精神安定剤による薬物治療とともに睡眠前に神経を高ぶらせる行動をとらない(運動・喫煙など)ことや太陽光を浴びるなどの非薬物療法を取入れます。
不眠が続くと不眠への恐怖が生じ、無意味な緊張や睡眠する際の環境への過剰なこだわりが、さらなる不眠の原因を生む悪循環に陥りやすいので、眠くなるまで寝ないなど病気と冷静に付き合う事も必要です。
レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群(れすとれすれっぐすしょうこうぐん)
/ restless legs syndrome /
夜になると出現する下肢を中心とした異常感覚により不眠、過眠を引き起こす病気
レストレスレッグス症候群(従来はむずむず脚症候群と呼ばれていました)は、夕方から深夜にかけて、下肢を中心として、「ムズムズする」「痛がゆい」「じっとしていると非常に不快」といった異常な感覚が出現してくる病気です。足を動かすとこの異常感覚はすぐに消えるのですが、じっとしていると再び出現してきます。
患者さんは布団の中でじっとしていることができず、眠くても眠りにつくことができません。何とか寝付けたとしても、睡眠が浅く、十分に眠れません。また、足が周期的にピクッピクッと勝手に動き続けていることが多く(周期性四肢運動障害)、これも睡眠を浅くします。このため、不眠だけでなく、日中の過眠も出現します。
レストレスレッグス症候群は中年以降、男性より女性に多い病気です。鉄欠乏性貧血や、腎不全による人工透析を受けている人に多いことが知られています。睡眠薬は無効で、パーキンソン病に使う薬が有効です。専門の医療機関で、検査・治療を受けて下さい。
レム睡眠行動障害(れむすいみんこうどうしょうがい)
睡眠中に夢体験と同じ行動をとってしまう病気。
健康な人ではレム睡眠中には骨格筋が弛緩して動きません。レム睡眠行動障害ではこの抑制機構が障害されるため、夢の中での行動がそのまま現実の行動となって現れてしまいます。
大声で寝言を言ったり、腕を上げて何かを探すしぐさをしたり、殴る、蹴るなどの激しい動作がみられます。症状が強いケースでは、起き上がって歩き回る、窓から飛び出して怪我をする、ベッドパートナーに怪我をさせるなど危険を伴うこともあります。
原因が明らかでない場合も多いのですが、約半数例には中枢神経の疾患がみられます。特に、パーキンソン病、レビー小体病、多系統萎縮症などで高頻度にみられ、これらの神経疾患の発症に先だってレム睡眠行動障害がみられることもあります